犬の不妊手術について


一般に雌に施す不妊手術を「避妊手術」、雄に施す不妊手術を「去勢手術」と呼びます。

 

避 妊 手 術
雌犬は生後約6〜10ヶ月齢で最初の発情期(シーズン)を迎えます。陰部が腫れ、出血することがありますが個体差により出血が確認できない場合もあります。この出血は人間の生理とは異なり、排卵時に起こる充血出血です。避妊手術は通常、卵巣割去(卵巣を摘出する手術)が主流に行われ、生後5ヶ月~6ヶ月齢位から可能です。避妊手術後は勿論発情がなくなり、妊娠することもなくなりますが、その他にも以下のメリットがあります。

1) 子宮蓄膿症候群(増殖性子宮内膜炎・慢性のう胞性子宮内膜炎・慢性化膿性子宮炎・子宮膿瘍を総称する)になる可能性が先ずなくなります。

卵巣の機能異常などにより、子宮内に炎症が起きたり、膿汁が溜まったりする病気で、気付くのが遅れた場合、命にも関わる怖い病気です。この病気になりやすい年齢は5〜7歳からで、発情期の後に起こる症例が多いようです。症状としては元気喪失・微熱・食欲不振又は廃絶・多飲・多尿・嘔吐・腹部膨満又は下垂などがあり、血液検査による白血球数はかなり高くなります。陰部から膿汁が出る場合もありますが、出ない場合(頸管閉塞)はこれらの症状が顕著に現われ腎臓など他臓器への負担も懸念されます。

2) 乳腺の腫瘍(悪性)の発生確率が卵巣を摘出していない場合に比べ遙かに低くなります。

乳腺の腫瘍の発生と卵巣ホルモンの間には密接な関連があるとされています。1回も発情周期を経験しないうちに卵巣割去された雌犬はそうでないものと比較すると乳腺腫瘍の発生率が顕著に低くなります。乳腺腫瘍は中年ないし老齢の雌犬にかなり高確率で発生する疾病です。この約半数は悪性腫瘍で罹患乳房の外科的摘出手術以外には有効な治療方法がなく術後も再発、他臓器への転移も懸念されます。
雌犬はお産を経験させないと長生きできないとか病気になるとか不確かな情報が氾濫していますが、このようなことは何等医学的根拠を持たないものです。正しい知識もなく彼らに繁殖を強いる方がよっぽど非人道的と言わざるを得ません。

去 勢 手 術
雄犬には雌犬とは異なり定まった発情期はなく、発情した雌犬に誘われて発情します。生後4ヶ月位から1年以内に去勢手術(睾丸摘出)を行う事によって、散歩中などに足を上げての頻繁な放尿行為(縄張主張であるマーキング)が控えられる確率が高くなります。興味深げに雌犬のお尻の匂いを嗅いだり、又突然飼い主の制御を振り払って発情中の雌犬に飛び掛かるような非紳士的な行動もなくなることでしょう。去勢手術を受けた場合そうでない場合と比較すると統計的に老齢になってから罹りやすい疾病(前立腺肥大・前立腺癌・及び肛門周囲線腫など)になる危険率が顕著に低くなるとされています。

従来のペットという立場から今日コンパニオンアニマルとして私達の生活に密接に関係している彼らは、大切に飼育されると共に、獣医学の発達による診療技術の向上、予防医学の普及(伝染病予防ワクチン及びフィラリア予防薬など)に於いて寿命が長くなっています。その反面人間と同じような病気(主に成人病、悪性の腫瘍など)に罹る危険性が高くなってきていることも否めません。予め防げる病気があるのですから、不妊手術を施すことはとても有意義なことです。不妊手術を受けると雌雄共に肥満になりがちと言われますが、これはあくまでも飼い主の給餌・運動管理が正しく行われればデメリットとして記載する必要もない事です。雌犬に関してはごく稀にではありますが尿失禁(卵巣摘出による卵胞ホルモンの欠乏が起因した骨盤筋肉の張力減少)を起こす場合があります。しかしこれも適切なホルモン治療で改善されます。一般に不妊手術は自然ではない、可哀想だなどと考える方もいます。しかし年間60万頭もの「不要」とされる尊い命が身勝手な理由で遺棄され、私達の血税で処分されている現実があります。大半が穢れのない純真な子犬子猫です。人間社会の中で私達の庇護なく生きていけない彼らのバースコントロールは責任持って私達が行わねばならないでしょう。先進諸外国では不妊手術は当たり前それがスマート(賢明)であるという見識が定着しています。胸を張って「家の子は不妊手術を受けています」と言って頂きたい。不妊手術施行はコンパニオンアニマルである彼らにも私達にとっても有意義且つ両者にとって有益です。


 

 

猫の不妊手術について

一般に雌に施す不妊手術を「避妊手術」、雄に施す不妊手術を「去勢手術」と呼びます。

 

避 妊 手 術
雌猫は年に数回発情期を迎えます。猫の場合は犬と異なり発情期に陰部からの出血は(排卵出血)見られません。排卵は交尾排卵(交尾による刺激で排卵が促される)なので妊娠する確率がとても高いのです。
避妊手術は通常、卵巣割去(卵巣を摘出する)が主流に行われ、生後5ヶ月~6ヶ月齢位から可能です。最初の発情期を迎えたか否かには関係なく若しくは発情中及び妊娠中(卵巣・子宮全摘出)に於いても手術は可能です。避妊手術後は勿論発情がなくなり、妊娠することもなくなりますが、その他にも、将来、子宮内膜炎、子宮蓄膿症候群及び乳腺の腫瘍(猫の場合は悪性腫瘍の確率が高い)などの雌特有の疾病に罹る確率が顕著に低くなるというメリットがあります。
雌猫の発情に関しては、個体差はありますが、屋外に出さなくても、雄猫を求めて昼夜を問わず大きな声で鳴き叫んだり、トイレとは別の場所で排泄してしまったり、飼い主側からは見るに聞くに耐え難い状況になる可能性があります。かといって愛猫の発情の度にその願いを叶えてあげていたら取り返しのつかない事態に陥るのは言うに及ばず。避妊手術は上記の如く発情中でも一般的には可能でその発情行動も術後すぐに見られなくなります。


去 勢 手 術
雄猫には雌猫とは異なり定まった発情期はなく、発情した雌猫に誘われて発情します。いくら外出させず室内に隔離したとしても、今日の住宅事情などを考慮すると屋外にいる発情している雌猫の雄猫を求める声、そして発情の匂いを完璧にシャットアウトすることは不可能でしょう。
去勢手術は精巣(睾丸)を摘出する方法が行われます。雌の避妊手術に比べると開腹はしませんから、手術時間も短く簡単です。手術を受けることによって、雌の奪い合い(雌を求めて放浪の一人旅に出てしまう事も)及び縄張り争いによる喧嘩の発生が緩和される事が予想されます。尿の異臭もホルモンの関係で、去勢手術を受けていない場合に比べると軽減されるようです。手術は生後4ヶ月齢経っていれば可能です。なるべくマーキング行為(雄猫特有のスプレー行為=特に臭いの強いオシッコを霧状に色々な場所に噴霧する行動)をし始める前に手術を受けることをお勧めします。一度癖付いてしまったスプレー行為は手術を受けても直らない危惧があります。但し癖付いてしまっていても直る可能性は否定できませんから諦めずに手術を受けて下さい。
去勢手術を受けると、雄猫特有に発生する疾病F.U.S(猫泌尿器症候群→尿道がマグネシウム等の結晶によって閉塞する疾病)に罹りやすくなるという説がありますが、この疾病は体質遺伝が深く関与しているもので、去勢手術との因果関係は認められず、何等医学的根拠のある説ではありません。
不妊手術を受けると雌雄共に肥満になりがちと言われますが、これはあくまでも飼い主の給餌・運動管理が正しく行われればデメリットとして記載する必要もない事です。

一般に不妊手術は自然ではない、可哀想だなどと考える方もいます。しかしその意見を尊重し自然に任せていたら1頭の雌猫が1年に3回お産をしその子供達が同じように又各々妊娠・出産を繰り返す事になるわけです。どんどんそのように増えていく命に対して全責任が取れる人間がいるでしょうか?家猫であっても外出する雄猫が何頭の雌猫を妊娠させているかなんて到底飼い主には把握できない事です。年間60万頭もの「不要」とされる尊い命が身勝手な理由で遺棄され、私達の血税で処分されている現実があります。大半が子犬子猫です。人間社会の中で私達の庇護なく生きていけない彼らのバースコントロールは責任持って私達が行わねばならないでしょう。先進諸外国では不妊手術は当たり前それがスマート(賢明)であるという見識が定着しています。胸を張って「家の子は不妊手術を受けています」と言って頂きたい。不妊手術施行はコンパニオンアニマルである彼らにも私達にとっても有意義且つ両者にとって有益です。